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  海

2014年01月15日

大観は、院展の中堅画家酒井三良に五浦の別荘を貸し与え、三良は昭和21年から29年まで五浦で暮らした。三良は、牛久の小川芋銭の誘いで院展に参加し、その影響から田園風俗を水墨で飄々と描き出し、独自の境地を確立していた。会津を拠点としていた三良は、五浦での生活によって海を描き始めたといえる。
華やかな色彩と技術を競う若手の画家が増えつつあった院展の中で、異色ともいえた「文人」芋銭は昭和13年に没している。清貧な文人画風は、院展では弟子の三良だけだったのだ。じつは大観の作品にも早くから稚拙な雰囲気があって、終戦直後には、戦時中の神がかったような富士や桜のテーマから離れ、五浦での初心を確認するように素朴な《漁夫》などという作品を描いている。三良が、巨匠と称される大観と響きあった古拙の趣が、この作品にもある。